散文 prose

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T.トマト                          T
掌編 '03.8

殺人狂は何処に? ここに?そこに?あそこに?
見てもいない死体が私の目の前で溢れ返っている。
嗅いでもいない腐乱臭が私の鼻を刺していく。
殺した奴らは何処にいる?



U.眼                            U
短編 '05.3

もう誰も騒がなかった。
火は消えるどころか水面下に、水面上に果てなく
垂直に燃え広がり、
海と空とを結んで一本の巨大な
火柱となっていた。

その炎の揺れる様はまさにイヨの踊る姿。
人の姿を借りた、ワダツミの化身だった。



V .観覧車                        V
掌編 '05.4

そうして世界を見てきたのだ。
高くなっていく高層ビルと、堕ちてゆく街々。
眼下に広がるおびただしい数の人間の生き様。
かつて見た夢がかくもむなしく壊されていくことを憂え、
彼は幾度涙を流したことだろう。