マンボウ-桃T-




あたしが夢見た桃源郷

まだ何も知らない頃
泣きながら夢を見ていた私と
今 夢から覚めても泣けない私は
どっちが幸せだろう。

何度も何度も繰り返し聞いた昔話は
馬になってあたしをどこまでも追いかけ、
何度も何度も繰り返し耳にした言い伝えは
今頃になってあたしの奥歯で深く息づく。

あたしたちだけの理想郷
そのために あたしは何度

あたしは彼女のためなら

あたしはただたった一人の人に
人並みに幸せになって欲しいと願っただけなのに。
ただそれだけだったのに。

あたしが生まれてくる必要なんてどこにもなかったの。
もしもこの深い井戸の底がタイムマシンにつながっているなら。
あたしはそこに行き着くためなら何だって捨てられた。
今はそんな夢を見ることさえ もうできない。

もしもそれさえも包み込んで愛しく思える
もしもそんな日が来るのならば
あたしはただ認められる前のマンボウになればいい。
はねることを知らずに羊水の中を漂っているだけでいい。
それでよかったのに。



夢から覚めてもまだ目は開けちゃいない