プール



あたしは小さい頃
世界中で脳を持つのは自分だけだと思ってて、
泥人形の手足に糸をくくりつけて
誰かがあやつってるんだと信じてた。
今だって、そう思わないわけじゃない。

なんにも聞きたくなかったから水の底。
音はあたしを追ってこない。
なんにも見たくなかったから水の底。
目を閉じることさえ必要なく、
ただ水面のきらきらと あたしの水着がゆれる赤。
あたしの髪がなびく黒。
あたしはおさかなで、ひとりぽっちなんだと
言い聞かせては喜んだ。

水のゴウゴウと自分のうめき声が
全ての音を支配する この征服感。
あたしの視界を遮るのは ただ
はげちょろけた15メートルのライン。

あたしを包む羊水がここにあるように、
孤独のベールはすそをはためかせ あたしにひざまづく。
キスをする。